AI検索時代のWebマーケティング戦略を再定義-マーケターが今やるべきこととは?-

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AI検索時代のWebマーケティング戦略を再定義-マーケターが今やるべきこととは?-

執筆者:

シニアディレクター
AI検索時代のWebマーケティング戦略を再定義

2022年11月にChatGPTがリリースされて以降、私たちの日常の中に生成AIが着実に浸透してきました。情報収集の起点が検索エンジンやSNSから生成AIへと移りつつある一方で、すべてのチャネルが一気に置き換わるわけではありません。検索エンジンやSNSは今も中心的な役割を担っています。

こうした「AI検索時代」にマーケターに求められるのは、GEOやLLMOといった対策に反射的に飛びつくことではなく、顧客の情報収集行動の変化を冷静に捉え、Webマーケティング戦略をあらためて設計し直すことです。

本記事では、AI検索時代における戦略の差分と設計の流れ、AIの活用ポイント、そして戦略設計で躓きがちなポイントまでを、筆者の実務経験を交えて解説します。

生成AIの登場によって情報収集行動はどう変わったか

生成AIによる情報収集行動に関する調査は枚挙にいとまがありません。[1] イバーエージェントのGEOラボが全国10代~60代の男女9,278名を対象に実施した、2026年3月の調査では37.0%が検索行動において生成AIを利用すると回答しています。若年層ほど利用率が高く、10代では66.9%に上ります。

またオンワードホールディングスが2026年7月に発表した調査では、SNS疲れを感じている層ほど、AIへ移行しているという結果も出ています[2] 

こうした傾向はBtoCだけでなく、BtoBでも現れています。CRMを提供するHubSpot Japanが2026年7月に発表した調査では、BtoB取引における買い手企業の50.3%が「候補となる商品・サービスの洗い出し」にAIを活用する結果となりました[3] 

出典:

 [1]生成AIのユーザー利用実態に関する調査 第三弾|サイバーエージェント GEOラボ

 [2]ファッション情報源と価値観の変化に関する意識調査|オンワードHD

 [3]日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026|HubSpot Japan

AI検索時代におけるWebマーケティング戦略の差分

マーケターはこのAI検索時代をどのように捉え、どのように施策に落とし込んでいけばよいのでしょうか。筆者は以下の5つの観点を持つことが重要だと考えています。

  • 情報収集の起点が変わる
  • 計測・可視化の方法と限界
  • チャネルのシフトではなくアド・オン
  • チャネルの役割の変化
  • 変わらないこと

情報収集の起点が変わる

AI検索時代では情報収集の起点が生成AIになることが多くなります。ファネルの上流から、すでに生成AIでの情報収集がスタートします。たとえば、以下のようなイメージです。

  • 興味関心(問題の認知⇒解決策の探索):出張がある。接待にいい店はないか
  • 情報収集(解決策の絞り込み):焼き肉がいいか、それとも寿司か
  • 比較・検討(絞り込んだ解決策の比較):A寿司店とB寿司店、どちらがおいしいか
  • 意思決定(決定した解決策の裏どり):A寿司店の口コミや評判は
  • 利用・推奨(継続利用や乗り換えの検討:A寿司店はよかったが次回は別の店がいいか

従来までは検索エンジンやSNS、ポータルサイトなどが担っていた役割の一部(あるいはその多く)が、生成AIに置き換わります。

そのため、これらの各フェーズで「AIに自社のブランドや製品・サービスが推奨されるかどうか」が、かなり重要になってきます。

計測・可視化の方法と限界

一方で、AI検索には計測の限界があります。ユーザーがどのようなプロンプトを入力したのかは正確にはわかりません。また、生成AI上のリンクをクリックして自社のWebサイトへ遷移すれば、GA4などのアクセス解析ツールに反映されますが、自社名やブランド名で再検索してWebサイトへ訪問した場合は「自然検索扱い」になります。

SEOやSNSの場合は、インプレッション⇒クリック⇒コンバージョンと地続きで分析が可能でしたが、生成AIの場合はインプレッションとコンバージョンの間に見えない溝があります。

現時点で計測可能な指標は以下のようなものです。

  • 生成AI上でのリンククリック(GA4で計測可能)
  • 生成AI上でのブランドやドメインの露出状況(無料、有料ツールで計測可能)

ツールについては以下の記事でも解説していますので、ご参考ください。

AI検索時代に必須!AI検索分析(GEO/LLMO対策)ツールおすすめ11選|特徴と選び方を解説

チャネルのシフトではなくアド・オン

ただし、すべての情報収集行動が一気呵成に生成AIになる、というのはいささか極端です。実際には、Google検索やSNS、リアル店舗や書籍、TV番組やラジオなど様々なチャネルでの情報収集が行われています。

筆者も、飲食店を探すチャネルは未だに食べログとインスタです。わざわざチャッピーに聞こうとは思いません。情報収集行動には、調べたいことに適した回答のフォーマット(料理の写真、動画、口コミ、評価)があり、現時点で生成AIがそのすべてに対応しているとは限らないからです。(今後はわからないですが)

既存チャネルから一気にシフト、というよりも既存チャネルにアド・オンという考え方が、今はまだ適切です。

チャネルの役割の変化

チャネルの役割は、やや変化します。消費者が生成AIである程度の比較検討を終えたうえで、自社のWebサイトに来るとしたら、それは「AIが下した評価の裏取り」と考えられます。そうなると、Webサイトにその証明となる情報がわかりやすく記載されているかが重要になります。

そしてもう1つ。生成AIに自社やブランドについて正しく理解してもらう、という役割です。筆者の分析では、情報量の少ないWebサイトよりも多いサイトの方が生成AIに露出する機会は増えます。理由はシンプルで、推奨するうえで必要な情報が十分確認できたブランドとそうでないブランド、どちらを推奨したいとAIが考えるかどうかです。

変わらないこと

チャネルが変わったとしても変わらないことがあります。それは最終的に、自社のWebサイトに訪問して、問い合わせや購入といった行動が行われるということです。(将来的に、AIが代替するケースもあり得ますが)問い合わせフォームが使いにくい、項目がやたらと多い、上述した「裏取り」ができないWebサイトは、結果的にコンバージョンは増えません。

もう1つ、「人」の介在が不可欠であるということです。BtoBの場合は、営業が介在します。BtoCであってもサービスを提供するのは(今はまだ多くの場合)人間です。高額な商品をAIの推奨だけで購入したいと思うでしょうか。購買のラストワンマイルは、当面は人間が担うはずです。

AI検索時代のWebマーケティング戦略設計の流れ

AI検索時代だからこそ、あらためて顧客の購買行動を整理しなおすことが重要です。場合によっては、まだGEOやLLMOに投資する時期ではない、という判断もあり得ます。

可能であれば以下の取り組みを検討してみてください。

  • ペルソナの再確認
  • カスタマージャーニーの再定義と実態把握
  • チャネルの再定義と実態把握
  • KGIとKPIの再定義
  • 計測環境の再整備

ペルソナの再確認

顧客となり得るペルソナを整理しましょう。生成AIでドラフトを作成してもよいですが、必ず実データあるいは現場の声(営業や販売担当等)と突合せを行いましょう。

生成AIでの露出状況を調査する際は、想定プロンプトを検討しますが、それを行ううえでも重要になります。

たとえば、BtoBのWebマーケティング支援を行う企業の場合は以下のようなペルソナが想定されます。

 項目ペルソナA
基本ペルソナ名・呼称田中 誠/マーケティング課長(45歳・例)
業種製造業(産業機械メーカー)
事業内容工場向け自動化装置の製造・販売。技術営業中心のBtoB
従業員規模約300名(従業員100〜500名)
所在地・商圏本社:東京/商圏:全国の製造業
売上規模約80億円
担当者役職・部門営業部内マーケティング課の課長。部下2名
意思決定での役割起案と候補選定を担当。最終決裁は部長・役員
評価されるKPIWeb経由の問い合わせ数・商談化数、最終的に受注貢献
課題・行動抱える課題(業務の悩み)営業頼みの新規開拓が頭打ち。展示会・紹介以外のリード源がない。サイトはあるが問い合わせに至らない。社内にWeb専門人材がいない
情報収集の仕方ChatGPT/Geminiで「BtoB Webマーケ 始め方」等を検索。業界メディア、セミナー、同業事例、比較記事も参照
比較・検討の進め方数社に相談し、提案内容・費用・自社業種への理解度を比較。上司・役員に説明できるかを重視
意思決定の決め手製造業/技術商材への理解、戦略から実行までの伴走、費用対効果の説明可能性、月額継続のしやすさ
競合認知想起する競合・比較対象広告代理店、SEO会社、総合コンサル、外部人材サービス
自社への期待専任採用まではしないが、戦略設計と実行管理を任せられる外部パートナー

カスタマージャーニーの再定義と実態把握

ペルソナを特定できたら、カスタマージャーニーを改めて整理しましょう。ここでの焦点は「生成AIをどの程度利用するか、参考にするか」という点です。ここも生成AIでドラフトを作成してもよいですが、アンケート調査やデスクトップ調査(他社の調査データの分析)などを行い実態と突き合わせることをお勧めします。

また営業や販売員などを介して実際のお客さまへアンケートを取るのも有効です。生成AIでの情報収集行動はブラックボックスです。直近半年の問い合わせのうち、生成AI起点の問い合わせが実は半数もあった、ということも十分あり得ます。

チャネルの再定義と実態把握

ペルソナとカスタマージャーニーを整理し、実データを確認することである程度、チャネルの「パワー」が測れるようになります。チャネルのパワーは「リーチ力」と「コンバージョン力」に大別できます。

  • リーチ力:どれだけ多くの人に届けられるか
  • コンバージョン力:どれだけ多くの人を態度変容させられるか。

たとえば、上述したサイバーエージェントの調査では情報収集の利用シーン別に「検索エンジン」「SNS」「生成AI」の利用率をデータ化しています。

興味深いのは、生成AIの割合は増えているものの、まだまだ「検索エンジン」が主流であることがわかる調査データになっている点です。

出典:生成AIのユーザー利用実態に関する調査 第三弾|サイバーエージェント GEOラボ

チャネルのパワーは、広告予算の配分率(アロケーション)に活用できます。

KGIとKPIの再定義

KGIとKPIを整理します。AI検索を主軸とする場合、たとえば以下のようなKGIとKPIが考えられます。なお、筆者は現時点ではAI検索対策(GEO、LLMO)のKGIを「売上」や「問い合わせ」に置くべきではないと考えています。計測が困難だからです。

KGIベンチマークとなる競合ブランドとの生成AI露出率の差分を埋める
KPI自社のChatGPT・Geminiでのブランド露出率競合のChatGPT・Geminiでのブランド露出率生成AI経由の流入数(GA4で計測)指名検索数(Google Search Consoleで計測)AI経由の問い合わせ数(サブ指標、アンケート等で取得)

GEO、LLMOの実践については以下の記事でも解説していますので、ご参考ください。

AI検索からどう流入を確保する?SEOを基本としたLLMO実践アドバイス

計測環境の再整備

KPIを定義できたら、計測環境を整備しましょう。まず、生成AIでの露出状況(ブランドメンション、URLメンション)を取得するのであれば、ツールの導入が現実的な選択肢になります。

生成AI経由の問い合わせを計測したい場合は、問い合わせフォームの経路やきっかけ欄の項目に「生成AI」を追加しておきましょう。GA4やGoogle Search Consoleが未導入の場合は、導入・設定しておきます。

営業や販売員が顧客へ配布するアンケート用紙やヒアリング項目にも、生成AIに関する質問を追加するようにしましょう。

AIをWebマーケティング戦略に生かす

AI検索時代のWebマーケティング戦略には、AIからの集客をどう伸ばすかだけでなく、AIをどう活用するかという観点もあります。

活用しやすいテーマ

比較的AIを活用しやすいテーマは以下です。ただし、AIは未だにハルシネーションを起こします。そのため、丸投げするのではなく上手に付き合う必要があります。

  • 情報収集や整理、壁打ち:市場の大まかな理解や調査、思考の整理
  • 議事録やその要約:Zoomなどの録画から議事録や論点を整理する
  • 関係者への情報共有:文字起こしを表や画像など共有しやすい形式に整える
  • 市場調査用の調査票作成:意図や狙いを伝えたうえで調査票に起こす
  • コンテンツ制作:ブログやWebサイトの原稿制作。人間が必ず手を入れる
  • デザイン制作:バナーやWebサイト。できればデザイナーが監修する
  • データ分析:広告の数値(CSV等)を読み込ませ傾向を分析する。意思決定は人間
  • 計測環境の整備:設定方法やエラーの原因を調査させる

注意が必要なテーマ

AIを鵜呑みにしすぎると、ときに間違った判断を下してしまう場合があります。以下のようなテーマは注意が必要です。

  • 新規事業のアイデア:AIはユーザーに「おもねる」ため、否定的な意見も聞くこと
  • ペルソナ策定:実データと突合すること。あるいは実データをもとに整理させる
  • カスタマージャーニーの整理:同上
  • KGIとKPIの定義:ドラフト策定ぐらいにとどめる。あるいは必要なデータを与える
  • 広告施策等の反映:人間が承認する。反映まで自動化するとミスが起きる

AIは何でもわかったような「フリ」をします。ユーザーの問いに回答する、というのが彼らの報酬回路になっているからです。実際は目があるわけでも、耳があるわけでもありません。そのため、「彼ら」が正しい分析や考察ができるよう、こちらもデータをそろえ、前提条件などの文脈をインプットしてあげる必要があります。

Webマーケティング戦略設計における躓きポイント

Wenマーケティングの戦略設計において、躓きがちなポイントを4つ、解説します。

AI対策ありきになっている

情報収集行動が生成AI起点になりつつあることは間違いありません。しかし、すべての情報収集が生成AIになったわけではなく、検索エンジンはまだまだ情報収集の中心的な役割を果たしています。自社のビジネスに対し実際にどの程度、生成AIが影響しているのか、冷静に分析する姿勢が求められます。

自社に都合のよいペルソナになっている

AI検索とは直接関係ないですが、実データと突合しない場合に起こりがちなのが「都合のよいペルソナ」です。SEO記事を制作する際に起きがちです。多くの場合は、検索ボリュームを意識しすぎる、自社の製品を売り込もうとしすぎる、姿勢が仮説を捻じ曲げています。

自社の伝えたいことを優先しすぎている

筆者もやらかしがちなのが、伝えたいことを優先しすぎて「顧客の知りたいこと」「世の中のニーズ」に寄り添えていないケースです。たとえば、「SEOとGEOの本質はエンティティ(※)の強化だ」と声高に叫んでも、多くの場合刺さりません。多くのユーザーが知りたいのは、本質ではなく明日の売り上げに効く具体的な施策、だからです。

※エンティティとは、人名や地名、用語の定義などの名称全般を指します。エンティティ同士の関係性によって、意味や文脈が決まってきます。たとえば、「ディレクバーバンク」という言葉と、「Webマーケティング戦略」という言葉との結びつきが強ければ、「ディレクターバンクはWebマーケティング戦略に強い会社」という文脈が生まれます。

KPIが受注まで接続されていない

BtoBでありがちなのが、流入数やコンバージョン数は分析するのに、それが受注や商談に貢献しているかまで分析できていないケースです。実は検索広告よりも、SNS広告の方が商談につながっていた、ということも起こり得ます。マーケティングに携わる人間は、「結果」から逃げずに、常にそれにさらされる覚悟が必要です。

まとめ

生成AIの浸透により、情報収集の起点は確実に変わりつつあります。しかし本文で述べたとおり、既存チャネルからの「シフト」ではなく「アド・オン」というのが現時点での実態です。だからこそ、AI対策ありきで施策に飛びつくのではなく、ペルソナやカスタマージャーニー、チャネル、KGI・KPIといった戦略の土台を、実データと突き合わせながら再定義することが重要になります。

その結果として「今はまだGEOやLLMOに本格投資する時期ではない」という判断に至ることもあるでしょう。それもまた、冷静な分析に基づいた立派な戦略判断です。 とはいえ、こうした戦略の見直しを自社だけで進めようとすると、どうしても「都合のよいペルソナ」や「伝えたいこと優先」といった本記事で挙げた躓きポイントにはまりがちです。第三者の視点を交えて自社のWebマーケティングを整理し直したい、という場合は、ぜひ以下のサービスもご検討ください。

この記事を書いた人

K.Minebayashi
シニアディレクター
ネットリサーチ(Fastask)やBIツール(Actionista!)など主にBtoB領域のデジタルマーケティングに携わる。特に、リード獲得を目的とした自主調査においては7年間で累計400件以上を企画、獲得しリードは60,000件を超える。 ファストマーケティング株式会社代表取締役社長。

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