2026年7月24日(金)、「Webマーケティング オンライン相談室」(主催:ディレクターバンク株式会社)が開催されました。毎月1回相談されているこのオンライン相談会では、Webマーケティング担当者からよくあるご相談をテーマに据え、各テーマを専門領域とするディレクターがアドバイザーとして回答します。
今回は「フォロワー数で終わらせないSNS運用とは?」というテーマで、BtoCのSNS運用事例と比較しながら、BtoB企業のSNS運用で成果につながる導線設計やコンテンツ企画を解説。アドバイザーは、企業のSNS活用支援を得意とするディレクターの赤坂 麻衣子さんです。
目指すべきところは、必要なときに思い出してもらえる状態

澤田:最初に、最近のSNSの状況や、その役割の変化について教えてください。
赤坂:InstagramなどのSNSで情報を検索するというのは、特に若い方を中心に、今や当たり前のことになっており、SNSでの投稿が認知だけでなく信頼形成の材料にもなっています。
SNSでの情報検索が選ばれる理由としては、まず、自分の興味関心に基づいたレコメンドの精度が高いという点があげられます。また、フォローしている人からリアルな情報を得ることができるので、友達からの口コミに近い感覚もありそうです。
企業のSNS運用において一番大切なのは「第一想起」、必要になったときに候補として思い出してもらうことです。これは、BtoBにもBtoCにも共通します。
ただ、SNSのなかでもInstagramは、もともと友達同士で「素敵だね」「おいしそうだね」という「映え」を共有するためのものです。そこにいきなり企業の宣伝感のある投稿が入ってしまうことになるので、どう馴染ませていくかを考える必要があります。
Instagramのアルゴリズムもどんどん変化しており、今は「エンゲージメント」が重視されるようになっています。つまり、フォロワーさんがどのくらいアクションをしてくれて、どのくらいファンになってくれているかが非常に重要になります。
BtoBでも「人」感が重要、ユーザーの困りごと起点で信頼を得ていく

澤田:SNSの役割を考えたときに、BtoBとBtoCの違いとしてはいかがでしょうか?
赤坂:BtoCは購入までの距離が近いので、友達が紹介している商品を見て、「私もこれ欲しい、買おう」となりやすいと思うのですが、BtoBではそれが起こりにくいんです。だからこそ、「親しい友達レベルの信頼性」を積み上げていくことが大事です。そのためのポイントが、3つあります。
まず1つ目は、結局「見ているのは人」ということ。BtoBだからといって、硬く、無難にする必要はありません。むしろ、親しみやすさ、「人が運営している」ところを見せていくべきです。
2つ目は、わかりやすさや共感。記憶に残る見せ方を意識すること。
そして3つ目が、「相手の課題や不安、知りたいこと」からコンテンツを設計することです。「これをアピール、宣伝したい」という企業目線ではなく、ユーザーの困りごとを起点にしてすることが大事です。
澤田:BtoBでは、炎上リスクなども気にされて、硬くなりすぎるケースは多いですよね。
赤坂:その塩梅は難しいところですが、成功しているBtoBのアカウントを見ると、楽しく、誰も傷つけない形で、「属人性」と呼ばれるような「人」感を出しているのがわかります。
また、BtoBは、マーケティングチームや広報チームなど複数人のチームで運用することが多いため、属人性が見えづらくなる難しさもあります。
そのなかでも上手に運用されているケースでは、たとえば「こういったチームでやっています」と、チームとして「人」感を出す工夫をされたりしています。特に、これから認知してもらう段階の場合は、「人」感を大事にしたほうが良いと思います。
追うべきはフォロワー数よりファンの数、エンゲージメント向上が指標
澤田:企業のSNS運用に関しては、「フォロワーを増やしたい」というご相談をいただくことが多いのですが、実際にSNS運用で成果を出されている企業は、どういった数値を見て運用されることが多いのでしょうか?
赤坂:基本的にはフォロワー数は多いに越したことはないのですが、本来の目的はそこではないはずです。たとえば、不動産など関東エリアで展開しているサービスで、対象エリア以外のフォロワーが多くてもあまり意味がありません。また、フォロワー数が多くてもアクティブでないと、アルゴリズム評価が下がってしまいます。
たとえば、フォロワーが1万人いてもお問い合わせが来ない企業様もいれば、フォロワーが千人でもしっかりお問い合わせが入っている企業様もいらっしゃいます。
SNS運用の指標としては、「ファンを増やすための指標」を数値化すると良いと思います。上司や他部署の説得が必要な場合は、「今はフォロワー数でなくエンゲージメントが一番大事なんですよ」とお伝えいただくのがポイントです。
「相談」に至るまでのプロセスを踏まえ、現状と抜けている点を分析

澤田:BtoBのSNS運用で目指したい状態として、「相談候補に入る」があるかと思います。そのためには、どのような取り組みが必要でしょうか?
赤坂:まずは、アカウントとして、人として、会社として、信頼してもらう必要があります。それを飛ばしていきなり「相談してもらいたい」と考えてしまうと、「問い合わせにつながらない」というお悩みになるのかなと思います。
「検討」や「相談」に至るプロセスとしては、まずはユーザーにリーチすることで「認知」され、「興味」を持ってもらう。この段階で、投稿の保存や「いいね」などのアクションが起こります。さらに、ユーザーが「理解」のためにプロフィールにアクセスし、「他の投稿も面白そう」「困ったときの参考にしよう」と思ってもらえると、フォローにつながります。
フォローしてもらえると、投稿がストーリーズに流れたりレコメンドされる機会が増えたりして、何かの検討や相談をしたいとなったときに「そういえばあそこがあったな」と思い出してもらえる。このプロセスを意識して導線を設計していくことが大切です。
そのためにはインサイトを見て、まず、「自社のアカウントが今どの段階にいるのか」を確認します。たとえば、「リールは再生されているのに相談につながらない」など、このプロセスのどこが抜けているのかを考えてみてください。
プロフィールを整備し、目的ある投稿を。認知拡大には「初速」も重要

赤坂:「相談」に至るまでのプロセスを踏まえ、まず整備すべきところがプロフィールです。たとえば、「リールがバズってリーチが一気に増えたけれどフォロワーが増えない」ということがよくあります。これは「バケツに穴が空いている」状態です。
リールや投稿を見て興味を持ち、「他にどんな発信をしている会社なんだろう」とプロフィールを見たところ、魅力的でない。これではフォローされません。せっかく注ぎ込んだ水が、溜まらずに漏れてしまっている状態です。
プロフィールは、ターゲット層に合わせた第一印象の見やすさを意識します。「誰に向けて」「何を支援しているのか」が一目で伝わるようにして、固定投稿やハイライトを適切に整備することも大切です。
また、一つひとつの投稿やリールに、意味や目的を持たせることが重要です。たとえば、「この投稿は保存して、後で何回も見返してほしい」「何かあった時に思い出してもらえるようなキラーコンテンツにしたい」「この投稿からフォローしてもらいたい」など。
なお、2025年末頃にInstagramのアルゴリズムが変わり、フォロワー数に関係なく、フォロワーからの反応が良かったアカウントのリーチが広がりやすくなりました。これは、新規アカウントにとってチャンスです。たとえフォロワーが10人でも、投稿をしてすぐ10人が「いいね」や保存、コメントなどの反応をくれると、一気にリーチが広がります。この「初速」が重要になっています。
澤田:初速を取りやすい投稿の傾向はありますか?
赤坂:投稿内容はもちろん、タイミングも大事です。一般的には、20~21時頃が一番アクティブな時間帯と言われますが、アカウントによっては、お昼休みの時間帯や週末に伸びるとケースもあります。自社のアカウントがよく見られている時間帯に投稿することを意識すると、初速が取りやすくなります。
人海戦術的にはなりますが、社内のメンバーにプライベートのアカウントでフォローしてもらい、投稿した際に「上げたよ」と伝えてすぐに「いいね」をしてもらうのも、フォロワーが100人に満たないような初期アカウントでは初速を生む大きな力になります。そうやって、最初はみんなで協力するのも1つの手だと思います。
3つの事例から考える、BtoBのSNSが成功するためのポイント
澤田:ここからは、赤坂さんが支援されてきた事例を3つ、紹介していただきます。
赤坂:1例目は、出版社様が運営されているECサイトのアカウントです。このアカウントは、支援開始の時点である程度フォロワー数がいる状態で、最終目的は「商品を売ること」でした。そのため、投稿を見た人がどれだけECサイトへ遷移したかが重要になります。
ECサイトへの集客のために、ただ投稿を見てもらうだけでなく、ユーザーの次の行動までの道筋を意識しました。たとえば、投稿からプロフィールへの導線、外部リンクを活用する際のユーザーが迷わない導線を徹底しました。
BtoBで考えると、問い合わせをしようと思ったときにその場所がすぐ分からないと、ユーザーは諦めてしまいます。そのため、どこから入っても案内が見えるようにすることが重要になります。
2例目は、旅行代理店様のアカウントです。SNS担当者が5名ほどおり、内製化支援をさせていただきました。このアカウントは、学生や若い方向けのコンテンツで、「第一想起」を取れるように運用しています。「旅行代理店で働いているプロがおすすめする情報」には権威性があり、第一想起を取るために効果的です。
また、投稿やリールの最後のページにはCTA(Call to Action:行動喚起の画面)を置き、保存が多かった人気投稿などを並べることでアカウント内を回遊してもらう仕組みを作っています。滞在時間が増えることでアルゴリズム上の評価が高まり、リーチが広がるという良いサイクルが生まれます。
澤田:BtoBでも、専門知識や「自社だからこそ知っていること」を発信していく形で応用できそうですね。
赤坂:そうですね。その際、「悩みごとを起点に考える」のが大切です。この旅行代理店様の場合も、「4日しか休みが取れない」「予算が限られている」「週末だけで弾丸旅行したい」といった悩みを起点にコンテンツを発信し、保存率やエンゲージメントが高まっています。
BtoBであれば、「この専門知識を使ってユーザーの悩みをどう解決できるか」という視点で考えていただくと、より良いコンテンツ作りになると思います。
最後の3例目は、食品メーカー様のアカウントで、イベント集客を支援させていただきました。普段は悩み事起点のコンテンツを発信されていますが、この事例では西日本を対象としたイベント集客が目的です。そのため、対象地域限定のレストランチケットなどの賞品を用意して、キャンペーンを実施しました。
澤田:単にキャンペーンを実施するのではなく、「どんな人を集めたいか」から逆算しているのですね。こういった事例を見ても、BtoB・BtoCいずれもSNS運用にあたっては、「目的を整理すること」が大事だと感じます。その第一歩として、どういったアプローチをすると良いでしょうか?
赤坂:「最終目的(CV)」をブレずに持つことが重要です。「お問い合わせ」「Webサイトへの流入」「無料会員登録」など、最終的なゴールを設定した上で、そこに至るプロセスに当てはめて、目標に対して何が成功していて、どこが不足しているか、現状を分析します。その上で、「バケツの穴を1つずつ埋めていく」ような作業から始めます。
澤田:赤坂さんは、マーケティング活動全体においてSNSをどのような位置づけとして捉えていらっしゃいますか?
赤坂:SNSは「認知を取ること」と「信頼作り」の場所だと捉えています。TikTokは拡散力、Xは情報力に強みがありますが、Instagramはそれに加えて「仲良くなれる」という点が非常に優れています。認知を広げつつ、フォローを通して関係性を深められるため、位置づけとしては「認知と関係性づくり」の場だと考えています。
ウェビナーを受けて参加者からの質問

Q:BtoBのSNS運用において、LinkedInで数字を伸ばすコツはありますか?
澤田:基本的には、今回ご紹介した考え方と同じだと思います。
特にLinkedInはBtoBが前提なので、どういう方のどういう課題に答えるコンテンツなのかを考えるのが重要です。ターゲットの困りごとからネタを考え、実際に投稿してインプレッションが広がった中にどれくらいターゲットとするユーザーがいるかを分析し、ABテストなどを行いながらターゲットの反応が良いネタを探ると良いのではないでしょうか。
赤坂:私自身はLinkedInでの支援事例はないのですが、BtoBで企業様が集まっていると考えると、友達が集まっているInstagramよりも権威性が大事なのではないかと思います。
たとえば、業界での実績や受賞歴、メディア掲載、書籍出版実績など信頼性をアピールすることなどが考えられます。Instagramでは逆に権威性から入ると嫌われるので、プラットフォームによってやり方を変えることが必要ですね。
Q:初期の運用目的や成果指標でおすすめのものがあれば教えてください。
赤坂:フォロワー数ではなく、フォロワー転換率を見ると良いと思います。プロフィールを見た方がどれくらいフォローしてくれているかがわかります。一般的には、5%あればかなり良く、4%くらいでも良いほうです。ただし、フォロワー転換率を上げるには、まずはある程度の投稿があることが必要です。
▼今回のオンライン相談室を踏まえた【実践編】が、8月6日(木)に開催されます。