AI活用で具体的に何ができる?デモ体験から具体的なプランへと展開、定着まで伴走

-はじめに、山中さんが携わっている支援領域や分野について教えてください。
生成AIを活用したマーケティングや業務効率化などの支援が中心です。もともとはSEOやコンテンツ運用に携わっていて、そこから記事制作やレポート作成の自動化、資料作成といった業務にAIを活用する方向へと展開してきました。現在は、自分で作成したAI活用サービスを20以上運営しています。
業界としては、不動産業界がメインで、医療業界の案件にも携わっています。ご相談内容としては、「人手が不足しているのでAIを活用したい」「WebサイトとSNSをまとめて運用したい」といったご要望が多いですね。ただ、特に不動産や医療は、信用によってビジネスが成り立つ世界なので、情報の管理には細心の注意が必要です。AIに学習させることのリスクも含めて、しっかりとした説明を心がけています。
AIに興味を持つお客様は多くいらっしゃいますが、具体的なビジョンまではっきりしている方は少ない印象です。そこで、商談の際にはまず、プロトタイプとしてデモを見ていただくようにしています。実物を体験していただいた上で、具体的なプランを設計していくわけです。また、ツールを導入して終わりというわけではなく、組織の中で定着するまでしっかりと伴走させていただきます。
AIにIR資料のベースを作らせることで、担当者は見せ方に注力できる
-さまざまな支援を経験してきたなかで、特に印象に残っている事例について教えてください。
不動産業界のお客様で、IR資料の制作を自動化した事例が印象に残っています。
以前は各物件の担当の方が手作業で資料を制作されていたのですが、ほかの業務で非常にお忙しい上に、バックアップに入れる人材もいない状況で、手作業での資料制作が負担になっていました。そこで、IR資料のベースになる決算資料を読ませると、叩き台として初稿を制作してくれるAIの仕組みを作りました。
それまでは物件の情報の正確な記載などに注意が向いていたところ、そういった資料のベースをAIが作れるようになったことで、担当の方は資料の見やすさやわかりやすさといった部分に意識を向けられます。それによって、投資家の方がより魅力を感じるIR資料を目指すことができるわけです。
また、資料作成後に財務担当の方の確認なども入ることを踏まえて、後のフローに携わる方にも配慮した仕組みにしました。それによって、IR資料作成に関わる業務フロー全体を効率化できたように思います。
実は、この案件は「デザインをAIにやってもらえないか」という相談からスタートしたものです。ところが、ヒアリングを重ねるうちに最初は気づいていなかったより重要な課題が見えてきて、双方で足並みをそろえて本当に有効な施策を打ち出すことができました。
多様な実務経験が、AIと人間の役割分担を判断するために活きている

-改めてになりますが、山中さんのこれまでの経歴について教えてください。
Webマーケティングに長年携わり、時代ごとの変化に対応してきました。
たとえば、2000年代には携帯電話向けのSEOコンテンツを担当していました。SEOに関する支援は、その頃から今に至るまでずっと続けています。Webサイトの運営マネジメントや法務、経理なども経験してきました。さまざまなWebサイトの運営経験を積んできたことで、お客様それぞれに最適なWebサイト運営の方向性をご提案できるようになりました。そのほかにも、スマートフォン向けSNSサービスの立ち上げなどの新規事業を手がけたり、M&Aに関わったりしています。
この10年ほどはWebマーケティングの支援が中心です。また、将来的にWebマーケティングを社内で完結できる体制を目指し、人材の育成も併せて依頼されることが多くなっています。
社内にWebマーケティングのノウハウを蓄積していただくには、属人化せず再現性のある仕組みを設ける必要があります。私は、そこに生成AIがぴったりはまるのではないかと考えました。そこで、ほかの業務の傍ら独学でAIについて学び、いろいろなツールの試作を重ねた末に、2025年末からAIを使ったWebマーケティングの支援を行うようになりました。
AIが普及するなか、既存のお客様から「自分たちの業務の中でAIを使って便利になることはありますか?」というご相談をいただくことも増えてきました。現在は私が携わっている案件の半分以上でAIを活用しています。その中で、AIに関する知見だけでなく、これまでの幅広い経験が生かされていると実感しています。
業務フローの全貌を把握した上で、AIに任せてよいところと人間が判断しなければならないところを判別し、それを踏まえたご提案ができるのは、私の強みだと考えています。
-山中さんが支援にあたって大切にしていることを教えてください。
まずはお客様のヒアリングと現状把握をしっかりと行い、お客様の業務の中身を理解した上で、粒度を小さくして提案することを大切にしています。
AI活用の成否は「どの業務にどう組み込むか」が肝です。しかし、ゴールまでの流れを提示しても今ひとつピンと来ないというお客様も多いので、実例としてデモを見ていただいたうえで「AIでこんなことができますけど、やってみますか?」とお伝えしています。
それから、AIのパフォーマンスに対する判断やフィードバックのポイントについて、丁寧に説明することも大切にしています。AIは完璧なものではなく、時には虚偽の出力をしてしまうこともあります。また、個人情報や機密情報を学習させるとリスクが生じます。AI活用では、そいうったリスクを正確に理解した上で、人間がきちんとコントロールすることが大切です。そのため、自分が担当を離れる際にも、そういったことをドキュメントとして残すようにしています。
AI活用で起こりかねない失敗として、AIを導入することで逆に担当の方の仕事が増えてしまうというケースがあります。これでは本末転倒です。そういったことのないよう、AI活用にあたっては事前にしっかりと仮説を立てて、長期的に労力を削減できるフローを組み立てるように心がけています。
組織としてAIを活用する時代へ、企業のフェーズに応じた環境整備を支援
-山中さんの今後の展望や抱負について聞かせてください。
今後、AI活用は組織として取り組む段階に入っていくでしょう。そのなかで成果をあげていくには、環境整備が大切だと考えています。
それを踏まえ、まずは、専任のAI推進担当を置けない中堅・中小企業向けの支援を考えています。人数が少なくリソースが限られている環境では、業務が属人化せざるを得ない、縦割りにならざるを得ない部分が多くあります。そこにAIを活用してバックオフィス業務などを可能な限り共通化することで、リソースに余裕ができ、社員一人ひとりが自分にしかできない業務に集中できます。それがスキルの底上げにつながり、より大きな成果に結びつくのではないでしょうか。
一方、規模の大きな企業でAI活用を進めていくには、経営層や管理職の方々の理解促進が重要だと考えています。AIによって現場の業務効率化が進むと、最終的な意思決定をする人が判断を求められる機会も増えることになります。ですから、中長期的に見ると、AI活用を前提とした考え方や判断基準をレクチャーさせていただく、というような需要も出てくるでしょう。
業界としては、医療や介護など福祉に関係する業界に注目しています。福祉関連の業界は、紙の書類が多くデジタル化があまり進んでいない傾向があるので、AI活用による業務効率化のポテンシャルは大きいはずです。また、福祉施設を利用するシニアの方の、家族には言いづらい悩みごとをAIが聞いて受け止める、という使い方もあるのではないかと考えています。
