人だからできる役割とは?AI×Webマーケティングで効果を最大化するためのポイント
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Webマーケティングにおいて、AIの活用は今や当たり前のものとなっています。一方で、AIを導入したものの思ったような効果が得られない、あるいはAIを導入したいけれど何に活用できるのかわからない、といった現場担当者の声も聞かれます。
本記事では、マーケティングにおけるAI活用の現状と、AIの活用領域が広がるなかで人が何をすべきかを解説します。また、具体的にAIと親和性の高い業務や、その効果を最大限引き出すために重要な人の役割について、ディレクターの後藤 茂太さんに現場視点での実践的アドバイスを伺いました。
目次
マーケティングにおけるAIと人の役割
生成AI活用の現状
公益社団法人日本マーケティング協会が2025年4~6月に実施した「マーケティングにおけるAI・デジタル活用に関する調査」によると、回答があった144社の85%がChatGPT、Geminiなどの文章系生成AIを、58%がMidjourney、Soraなどの画像系生成AIをマーケティングに活用しています。活用領域は企画・アイデアのための調査補助・壁打ち(72%)、議事録・報告書・企画書などの作成(71%)、コンテンツ作成の高度化・省力化(55%)などとなっており、AIがマーケティングの幅広い領域で役立っていることがうかがえます。

AIを活用できる領域は今後もより広がっていくでしょう。Webマーケティングにおいては、市場トレンドや顧客行動の予測、個々のユーザーに最適化された広告配信などにも活用が進んでいくことが予想されます。
AIを活用しながら人は何をすべきか
AIの活用領域が広がる一方で、AIが十分なパフォーマンスを発揮し、そのアウトプットを適切にマーケティング施策に反映するには、人間による適切な指示と判断が必要です。
マーケットの動きに目を光らせ、優先すべき施策を考え、AIに適切な作業を実行させるのは、すべて人間です。また、AIが生成したコンテンツに問題がないか、ユーザーに受け入れられるものなのか精査するのも人間の役割です。
そのことを踏まえ、これまでさまざまな企業のDX化支援を経験し、AI活用についての知見も豊富なディレクターの後藤 茂太さんに、マーケティングにおいてAIをどう活用し、人はどのような役割を担うべきなのか、現場視点での実践的アドバイスを伺ってみました。
現場のプロが解説!AI活用で失敗しないためのポイント

後藤 茂太
DX環境構築のプロマネ経験豊富なディレクター。某外資系企業の日本子会社の販売管理システム改善プロジェクトを担当中。
AI活用と親和性が高いのは分析業務
-Webマーケティングにおいて、AIを活用しやすいのはどのような業務ですか?
後藤:分析業務との親和性が高いですね。各種データをAIに読み込ませることで、以下のような、人がやると時間がかかる作業を一気に短縮できます。
- データの整形:不要項目の削除、カテゴリ分け、期間別の再集計
- 指標間の関係性の抽出:どの施策がどの指標に効いているか
- 変化点の自動検出:急に反応が上がった・落ちた理由の推測
ひとつのツールだけで行うのは難しいことの多い「過去との比較」や「細かい粒度での把握」も、AIでまとめて行うことができます。
分析業務にAIを活用することで、客観性が高まります。データというのは、分析する人によって見方や評価が変わってしまうことが多々あります。そこをAIに置き換えることで、アウトプットを客観的に捉えられるようになります。
AIを「データ加工と分析の相棒」として使うことで、判断スピードと質が両方上がる、というイメージです。
また、特に中小企業では、Webマーケティング施策に必要なデータをすぐに出せる状態になかったり、とりあえずExcelでデータを管理しているという状況が散見されます。AI活用をきっかけに、そうしたアナログな部分の改善が進めば、働き方改革にもつながり、全員がWin-Winになれると思っています。
3つのステップでAI活用の効果を最大限引き出す
―WebマーケティングへのAI活用で効果を出すために、押さえておくべきポイントを教えてください。
後藤:AIに限りませんが、ツールを使いこなすには、実際の現場で「どう使いたいのか」というイメージが必要です。まずは「目の前の業務で何に困っているか」を洗い出しましょう。その上で、次の3つのステップを踏まえて活用することをおすすめします。
1. 目的と判断基準をAIに明確に伝える
後藤:AIは、「何を良しとするか」が曖昧だと、途端に精度が下がります。例えば、「良いリードを抽出して」と伝えるより、「直近30日でCV率が高かった流入元を基準に似た特徴のリードを探して」と条件を明確にすることで精度が跳ね上がります。
雑な聞き方をすれば雑な答えしか返ってきません。AIを使うにあたり、「どこで差別化し、どこで価値を出すか」は、一人ひとりが考え続けなければならない課題です。
2. データの「質」と「粒度」を整える
後藤:AIによる分析精度を上げるには、AIに渡すデータを整えることも重要です。一般的に、Webマーケティングに関するデータでは、以下の点を整えることで分析の精度が上がりやすくなります。
- 期間・チャネル・キャンペーン名の形式を揃える
- メモ欄に重要情報が埋まっている場合は構造化しておく
- リードスコア、CV、流入元など“軸”を統一
また、目的から逆算して「こうあるべき」という自分なりの軸を持つことも大切です。
データのラベリングやカテゴライズといった、人間側の思想(フレームワーク)が欠如していると、「AI分析を走らせたけれど、結局何が言いたいかわからない」ということが起こりがちです。
3. 人間が“方向性の舵取り”をする前提で使うこと
後藤:AIを分析に活用する一方で、企業の戦略・市場特性・ブランド文脈を踏まえた意思決定は人間の役目です。AIが提示する洞察はあくまで「仮説の候補」として扱い、どの仮説を深掘りするかは、人が選ぶことが重要です。
また、AIが出した結果は、一つの「仮説」や「判断材料」に過ぎません。その精度をより高めるには、プロンプトを工夫し、段階的に分析を進めていくことが大切です。たとえるならば、「東京から新大阪まで新幹線で行き、そこから先は別の手段を考える」というように、一辺倒ではなく細切れに枠を決めて進めるのが良いでしょう。
よくある「AIが使えない」パターン

―WebマーケティングのAI活用において、失敗しやすいパターンはありますか?
後藤:前述のポイントと逆になる、以下のパターンは失敗しやすくなります。
1. “AIを使うこと”が目的化してしまうこと
本来は「CVRを上げたい」「CACを改善したい」などの目的が先にあるべきなのに、AIを導入したことで満足してしまい、実務に落ちていないと成果につながりません。
そうならないよう、AIが動く「枠」を最初に決めましょう。戦略判断・意思決定は人間が握り、AIには「分析作業」「仮説生成」「文章生成」などの「役割」を割り振ります。もしAIがズレた提案をしてきた場合も、「目的」「対象」「評価基準」を再提示して枠を締め直すと、すぐに軌道修正できます。
たとえば、「このキャンペーンの目的は新規獲得。既存育成案は除いて再提案して」といった指示を行うイメージです。
2. データが整っていないままAI分析を走らせること
後藤:雑なデータをAIに渡しても、雑な結果しか返ってきません。乱れたデータからは、乱れた結果しか返ってきません。
そうならないよう、最低限の「データ整形ルール」を作っておきましょう。完璧にクレンジングする必要はなく、たとえば以下のような「揺れやすい部分だけ統一」するだけでも十分使える結果を得られます。
- チャネル名(Google / google / ggl…)を人の手で先に揃える
- キャンペーンIDを付与しておく
- CV定義を統一する
AI分析でおかしな結果が出たなら、原因はほぼデータの粒度か表記ゆれなので、そこを確認しましょう。
3. AIに「戦略判断」まで丸投げしてしまうこと
後藤:AIは分析や要約は得意ですが、「どの市場を攻めるべきか」「ブランドの一貫性をどう保つか」といった戦略判断は苦手です。それを理解せずに人間側が前提・目的設定を曖昧にしてしまうと、「妙にそれっぽいのにズレている」施策が提案され、誤った方向へ加速してしまいます。
そうならないよう、AIの提案はつねに「仮説候補」として受け取り、マーケティング担当者の判断軸(顧客理解・市場感・ブランド文脈)でふるいにかけましょう。AIが誤った方向に走っている場合は、どの前提が間違っていたかを言語化し、AIにその「修正文脈」を学習させることでリカバリーできます。
たとえば、「前回はブランドトーンが合わなかったので、落ち着いた語調で書き直して」といったイメージです。こういった「条件上書き」が、AIとうまく付き合うためのコツです。
AI活用でリード獲得や商談化率が改善した事例

―後藤さんが支援してきた、あるいはご存じの事例のなかで、WebマーケティングへのAI活用でうまくいった事例を教えてください。
後藤:BtoBのSaaS企業様で、「リードの優先度がつけられず、インサイドセールスが手詰まり」という課題に対し、AIを活用したことがあります。
この事例では、CRM内の行動ログやメール開封・クリックデータをAIに読み込ませ、「商談化しやすい特徴」を自動抽出しました。すると、従来は属人的だった「勘どころ」が可視化され、架電順序が最適化。その結果、MQL→SQL化率の改善にもつながりました。
また、BtoBのメーカー様で、「展示会後のフォローが遅く、ホットリードの取り逃しがある」という課題に対し、AIを活用したこともあります。
この事例では、展示会名刺+Web行動データをAIで統合し、「熱量の高い順」に優先フォロー対象を並び替える仕組みを作成しました。そして、AIで一次メール文面を自動生成し、担当者が微調整だけで送付できるように。
その結果、フォロー時間が4分の1に短縮し、受注までのリードタイムの大幅改善につながりました。
さらに、すぐにできる身近なAI活用として「録音」をおすすめします。商談や会議などを録音してAIで文字おこし・要約することで、その内容を客観的な記録として可視化できます。内容の分析も可能です。
ちなみに最近、自分自身の商談の録画データを「NotebookLM」に読み込ませて分析してみました。そのなかで、「自分のリップサービスがどれくらいあったか」を問うてみたのですが、正確な回数が出てきたんです(笑)。さらに「それは受注のための嘘か、誠実なものか」などと深掘りすることで、自分のコミュニケーションの癖を客観視できます。
こういった使い方は、ハラスメント防止や、コミュニケーション能力向上のための「仲立ち」として役立つはずです。
AI活用は目的と基準を明確に、人が判断すべきこととの役割分担を
AI活用の目的と判断基準を明確にした上で、AIを分析や予測に活用することで、人間の判断のスピードや質を上げ、売上や利益の改善にもつなげることができます。なお、AIの分析精度を上げるには、データの質・粒度を整えることが重要です。どういった軸でデータを整えるかという点は、人の経験や判断に委ねられるところでしょう。
Webマーケティングでは、「AIに任せたほうが効率的なこと」と「人が判断すべきこと」を明確にして役割分担をすることで、大きな業務効率化が期待できます。まずは、現場で時間や手間が大きくかかっている業務、人の手が足りない業務などを洗い出すことで、AI活用の可能性が見えてくるのではないでしょうか。
とはいえ、
「自社の業務のどの領域にAI活用の可能性があるのかわからない」
「AIに読み込ませるデータをどう整備したら良いかわからない」
というような場合は、外部の視点を取り入れるのもひとつの方法です。
ディレクターバンクでは、AIを活用したマーケティングの内製化や業務のDXの支援も行っておりますので、ご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。
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山口県出身。京都大学文学部卒。国文学専攻だったので源氏物語など王朝物語に普通より少しだけ詳しい。
EC企業(マーケティング、コンテンツ制作担当)、EC業界向けメディア(記事の執筆・編集、メディア運営を担当)を経て、2017年に独立。
ライター・編集者として、紙媒体・Web媒体問わず幅広い分野の記事を企画から執筆まで対応。Webマーケティング、ECのオウンドメディアコンテンツ、採用インタビュー、事例取材などの実績多数。