Webマーケティング人材
「問い合わせは来るのに売れない」を仕組みで変える。DX・AI活用で現場を支援
後藤 茂太

プロフィール
DX環境構築のプロマネ経験豊富なディレクター。計測・制御機器を扱う大手メーカーの新規市場開発部門で営業やマーケティングの手法を身につけた後、製造業のベンチャー企業に転職。現場での経験を重ねながら、副業でさまざまな企業の新規開拓を支援するようになり、独立に至る。現在は某外資系企業の日本子会社の販売管理システム改善プロジェクトを担当中。
インタビュー
問い合わせ100件に対して受注は0件?必要なのはリード商談化の仕組み
ー後藤さんがこれまでに実績の多い支援領域や、得意としている分野を教えてください。
ひと言でいうと、「リード獲得後の仕組みづくり」を得意としています。広告やホームページ経由の問い合わせを、商談につなげ、受注まで持っていく一連のプロセスを、設計・改善する支援を多く行ってきました。
「問い合わせは来るのに受注につながらない」という相談は少なくありません。過去の事例では、「月100件の問い合わせがあるのに、1件も受注につながらない」というケースもありました。
原因のひとつが、顧客管理ができていないことです。その対策として、顧客の氏名、会社名、属性などを整理して情報化し、誰に対してどのようなアクションを取るのかという動きを設計します。顧客管理ができていると、顧客の属性ごとに、「どのアプローチが有効か」「どの段階でどんな商談の進め方が合うか」という型を設計できます。
このように、データを積み上げて可視化し、さらに実際のアクションまで伴走するのが、支援の中心です。ただシステムを導入するだけでなく、「実際にどう運用していくか」という部分まで含めて仕組み化できる点が、自分の強みだと思います。
ヒアリングを通じ担当者の不安を具体化。メンター型で壁を越えた伴走支援事例

ーさまざまな支援を経験されてきたなかで、特に印象に残っている支援事例について教えてください。
住宅メーカーのM社の支援が印象に残っています。M社は、新築からDIYまで顧客のニーズが幅広く、それらをデータとして蓄積しながら、営業部隊で管理できる仕組みを整えたい、というご相談でした。
システムを導入すればやりたいことを実現できるとは理解しているものの、「どこから、どの順番で進めればよいのかわからない」というのが、担当の方の状態でした。ただ、ヒアリングを進める中で、担当の方にはすでに必要な知識があり、やるべきことも整理されていると感じました。それなのになぜ動けないのか。お話を伺っていくと、「設計はできるけれど、それが本当に正しいのか不安。さらに、それを営業メンバーに継続して説明していける自信がない」という不安があることがわかりました。
その不安を解消するために提案したのが、仕組みの設計だけでなく、営業部隊への説明や現場への浸透まで支援することです。当初は、システムの実装を手伝ってくれる人材がほしいというお話でしたが、結果としてメンターのような役割で伴走する形になりました。
正直なところ、ヒアリングの前半では、「この方なら一人でも進められるのでは」と感じていました。しかし、不安の中身が具体的に見えたことで、ディレクターとして「自分にできる役割」がはっきりしました。最終的に「後藤さんと進めると安心します」という言葉を頂いたことが、一番印象に残っています。お互いに納得感を持って進められた案件でした。
DXやAIが「よくわからない」不安に対し、一歩目から段階的に支援
ー企業から寄せられる相談の中で、最近、特に多いものはありますか?
大きく2つあります。ひとつはAIの活用です。「自分たちの業務をどうAIで置き換えられるのか、何から手をつければいいのかわからない」というご相談が増えています。
もうひとつは、DX全体の方向性です。AIとも関連しますね。「デジタルを活用して、これからも事業を継続していけるのか」という不安を抱えている企業も少なくありません。
ーAIなどの技術が著しく進化していくなかで、Webマーケティングの現場で感じる変化はありますか?
変化は大きいですね。感覚的には、15〜20年前にインターネットが普及し始めた頃と同じような空気を感じています。「AIが登場したからといって仕事がなくなるわけではない」ということは繰り返しお伝えしていますが、それでも「よくわからない」という不安は根強い。
「わからないお化け」みたいなもので、「ある日突然、自分たちのやっていることがひっくり返ってしまったらどうしよう」という感覚を持っている方が多いんです。
そういった感覚に対して、まずは既存顧客への営業に依存している状態から一歩踏み出して、「デジタルを活用して新しい顧客にアプローチできないか」というところからご提案することが多いですね。その流れの中で、「こういうAIを使えばこんなことが実現できます」と具体的にご紹介しながら、実際に触れて理解を深めてもらう。そうした段階的な支援を心がけています。
ーAIが入ってきたことで、後藤さん自身の支援スタイルに変化はありましたか?
大きく変わりましたね。以前は、ヒアリングの段階で「このストーリーで進めれば成果につながる」という仮説を描いて、それを提案資料に落とし込み、進捗を確認しながら進めていくスタイルでした。
ただ、途中で必ず想定外の「変数」が出てくるんです。当初のプランとのギャップが生じた時に、自分の頭の中だけで整理しきるのは難しく、時間が足りない場面もありました。
今は、打ち合わせの録音・録画を含めたやり取りすべてを蓄積し、それらをAIで整理して、当初のゴールと照らし合わせています。このスタイルでは、生じうるギャップやリスクを事前に見通すことができ、突発的なことが起きても、想定の範囲内としてすぐに対応できるようになりました。
稼働時間も圧倒的に短縮されて、自分自身の生活の質もかなり上がりました。AI活用による変化を自分自身で体感しているからこそ、企業への支援においても自信を持って伝えられる部分もありますね。
大手でもベンチャーでも通用した、再現性のある「顧客管理の型」を武器に独立へ

ー改めてになりますが、後藤さんがWebディレクターとして活動されるまでの背景を教えてください。
新卒で入社したのが、計測・制御機器を扱う大手メーカーです。そこで、「新規市場開発部門」に配属されました。新しい市場をゼロから立ち上げていく、今で言う社内ベンチャーのような環境でしたね。
マーケティングの世界では、ちょうどSalesforceが登場した時期です。会社としてもその考え方をいち早く取り入れていました。当時の私にはマーケティングの知識がほとんどありませんでしたが、周囲の営業コンサルタントの方々から営業やマーケティングの基本を一から教えてもらいました。
そのなかで取り組んだのが、顧客の情報をExcelで整理・分類してSalesforceに取り込み、進捗を管理していく方法です。データを蓄積していくことで「どのタイミングで誰にアプローチすべきか」が自然と見えてくる。この経験が、現在の支援スタイルの原点です。
ただ、成果は出ていたものの、「大手メーカーの看板があるからうまくいっているのではないか」という気持ちがありました。それを確かめたくなり、未経験の業界である電子部品を扱う製造業のベンチャー企業に転職し、それまでに身につけた型を実践してみたところ、同様に成果が出たんです。「自分の中に再現性のある型がある」という確信を持てた経験でした。
その後、「この型は他の企業でも通用するのでは」と考えるようになり、副業としてスポットコンサルという形でさまざまな企業の新規開拓を支援するようになりました。その経験の積み重ねが、現在の活動につながっています。
「7割聞いて、3割話す」聞くことで答えが見つかり、パートナーとして長く続く関係に
ーさまざまな支援事例のなかで、クライアントから、特にどのような点を評価してもらっていると感じますか?
「伴走していること」が最も評価していただいている点だと思います。加えて、相手の状況やリテラシーに合わせて柔軟に関わり方を変えられることも、強みのひとつです。
以前は、「この通りに進めれば成果が出る」という前提で資料を作り、「これを見れば進められます」とお渡しするスタイルでした。でも、実際にはなかなか実行につながらない。それが10社続いたときに、「提案の前に、まず聞こう」と方針を切り替えました。
この方針転換に関して、印象に残っているエピソードがあります。
あるクライアントを訪問した際、打ち合わせの大半が近所のおばあさんのお餅の話で終わったことがあったんです。最初は戸惑いましたが、後から振り返ると、あの方は僕と関係を築きたかったんだと気づきました。そこから、「相手の話を聞くこと」の重要性を強く意識するようになりました。
今は「7割聞いて、3割話す」を基本のスタンスにしています。3回の打ち合わせがあれば、そのうち2回はヒアリングに充てる。丁寧に話を聞いていくと、クライアント自身の言葉の中にすでに答えが含まれていることも多いんです。「なぜこれまで実行できなかったのか」と問いかけることで理由が見えてきて、「だからこそ支援してほしかった」という言葉が返ってくる。
そこから、「まず何から始めるべきか」という具体的な一歩が見えてきます。
ー後藤さんが考える「伴走」とは、どのような関わり方を指すのでしょうか?
Webマーケティングで一般的に言われる「伴走」とは少し違うと思いますが、僕の伴走は至ってシンプルで、「相手の話を丁寧に聞き続けること」です。課題がある程度整理できた段階で「ここまで来たら、あとはご自身で進められますよね」とお伝えすることもあります。それでも「一緒に進めてほしい」と言っていただけたときに、あらためて伴走を続けます。
仕事をするうえで、「長く関係を築けるか」という点も大切にしています。3年後にも自然に名前を呼び合える関係でいたい。だから、初回の打ち合わせから「合わないと感じたら遠慮なく言ってください」と率直にお伝えするようにしています。その姿勢が、結果として相性の合う方との継続的な関係につながっていると感じています。
ー今後、特にサポートしていきたい企業や業界はありますか?
これまでもそうでしたが、今後も、製造業には関わり続けていきたいですね。
製造業は日本の強みとなる分野です。大手メーカーだけでなくその下支えとなる町工場まで含めると、本当に多くの企業があります。ただ、現場には誠実でまっすぐな方が多い分、変化のスピードへの対応に難しさを感じているケースも少なくありません。
属人化した業務や非効率な営業活動など、製造業の現場は、デジタル化やAI活用で改善できる余地が大きいと感じています。「このように使えば業務が変わります」という筋道を一緒に作るところから始めて、本格的なAI活用の実装までご一緒するケースも多くあります。
デジタル化やAIについて、現時点では自分の方が先に情報をキャッチアップできる立場です。その知見を少しでも現場に還元したいという思いがあります。単に支援するのではなく、同じ時代を生きるパートナーとして、ともに変化を乗り越えていきたいです。

